2008年12月1日月曜日

末摘花~すえつむはな

ブログ名の「末摘花(すえつむはな)」は、源氏物語に出てくる女性。
当然源氏が手を出した相手だったが、その姿に男はとても驚いた。
とても不美人だったのだ・・・・特のその大きくて赤い鼻。
末摘花とはベニバナの古い呼び名、彼女の赤い鼻がその花を連想させたようだ。
(写真はネットより拝借)

当時は女性に言い寄るときは、そのお付きのもの(お世話係)を介して、
手紙のやりとりから始め、色々とおいしいことを言って女性に詰め寄る。
しかし会話はあくまでも、御簾越し、机帳越し。
焚きしめる香の善し悪しや髪の豊かさ、着物のセンス、
歌のうまさなどの「雰囲気」と「想像力」で恋を進める。
いざコトに及ぶ時に相まみえるのだが、女の屋敷には夜に忍び込むから
ハッキリとした姿は拝めない。
だから朝方、女の屋敷を出る時にその姿を見ることになる。

今回は世話役(=手引き役)の命婦がプロデュースして、
姫君と源氏を引き合わせたのだが
手の早い源氏は、あっという間に女と関係を持ってしまう。
しかし、あまりに女の手応えがないことに失望し、
源氏は暗いうちに帰ってしまう。
だからここでは顔を見ていない。
その後、普通ならオトコが自宅に戻り、
朝のうちに女に対して手紙(ラブレター)を書くのだが そう言う気も起こらない。
しかし、それではあまりに気の毒と、夕方になってやっと手紙を送る。
女は常陸宮の姫君だから、身分は高く、
軽んじることはできないと思う源氏の義務感。

そう言う気持ちを知ってか知らずか、
姫君は恥ずかしさのあまり、源氏の手紙に返事も書かない。
とにかく世間とはかけ離れた暮らしなので、な~んも知らない姫君。
ハラハラする周囲にせかされて、色褪せた古めかしい紫の紙に、
これまた古い書きようで 色気のない文を書くことしかできない。
恋などしたことないから。
結局失望した男は忙しさにかまけて、しばらく女の所に足を向けない。
女は、待っていたののに。しかしただただ恥ずかしがって行動しない姫君。
ある時世話役の命婦が源氏と会うことがあり、
姫君が寂しくしておられると聞き及ぶ。
その後姫君の屋敷に時々通うことになり、何くれを世話を焼き始めるオトコ。
そしてとうとうある雪の朝、源氏は末摘花の正体を見てしまう。
見なきゃイイノニ。

寂聴さんの訳によると、

座高がイヤに高く、胴長。その鼻は普賢菩薩の乗り物の象のよう。
先の方が垂れ下がり、赤い。
顔色は蒼白で、むやみにおでこが広い。
とにかく痩せていて、肩のあたりは痛そうな程ゴツゴツ している。
着物も若い姫君が着るにはあまりにも古びていて、
時代遅れのその姿は気の毒に思える。

その姿を見た男は、呆れてモノも言えず、いたわしくも思われ、
そそくさと自宅に逃げ帰ってしまう。
しかし、女は無欲がゆえに男に好まれてしまうのだ。
普通の器量なら、言い寄る男もいるだろう。
しかしこの様子では、自分がいなければ、誰も面倒を見るモノはいない。
この姫君はあの朽ちかけた古い屋敷で、どうやって暮らすのか・・・・
思案した男は自分の元に姫君を呼び寄せ、一生面倒を見るのである。